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中原浩大展 自己模倣 KODAI NAKAHARA: Migration or Retrospective

会場

岡山県立美術館 地下展示室、屋内広場ほか

THE OKAYAMA PREFECTURAL MUSEUM OF ART

会期

2013年9月27日(金)から11月4日(月・祝)まで

展覧会概要

中原浩大展 自己模倣 ナカハラコウダイテン ジコモホウ

KODAI NAKAHARA: Migration or Retrospective

本展は、中原浩大の過去と現在そして未来を巡り、呼び戻すための場となります。

中原浩大(岡山県倉敷市生まれ、1961-)は、1980年代から様々な素材やメディアを駆使した作品を制作しては、「美術」という概念を問い質し、我々にこの領域のさらなる先をも示してきた美術家です。中原は80年代から同世代の美術家たちとの発表の場を自ら積極的に設け、そこで次々と発表された独創的かつ根源的と称された彫刻や絵画は、「ポストもの派」を継ぐ表現として活動当初から高い評価を得ました。90年代以降は、レゴ・ブロックやプラモデル、フィギュアといった既成の玩具や日用品を用いて「彫刻」というメディアそのものを問い質す作品を次々と制作、美術界に大きなセンセーションを巻き起こします。95年以降は通常の展覧会という形での発表から退く一方、阪神大震災で被災した児童のために考案されたkamepao projectへの参加や、京都の宇治川河畔にて燕の生態を詳細に記録した作品、京都市立芸術大と宇宙開発事業団NASDAとの共同研究など、美術という範疇のみにとどまらない活動を展開しており、いまこそあらためて検証されるべき、かつ今後の動向が最も注目される作家の一人と言えるでしょう。

本展は、その中原浩大の公立美術館における初の大規模な個展です。まず、80―90年代に発表されて以後、ほとんど展示される機会のなかった作品が、展覧会の一つの柱となります。当時の評価や言説ばかりがまるで亡霊のように流布する今日において、本展は誰しもがその実作品に触れ、一様にこの作家を論じうるための貴重な始点となるはずです。
一方で中原は、2010年夏に自身の作品倉庫が火災に遭い、それまでの作品の多くを焼失するという惨事を経験しました。しかし彼は、こうした出来事を受けとめて作品を「回復」させるために、ある作品は当時の玩具をあらためて収集し、また焼けてしまった作品に処置を施し保存を試みるなど、当時の「模倣」でありながら、現在の作家の視点における「新作」とも言えるものを制作しています。こうして生み出された「新作」と「再制作」というアイデンティティが共存した「作品」が、次なる点となります。
そして最後に、1995年以降に制作されながら、あるものは制作されたそのままに放置され、あるものは半ばで宙吊りになっていた未発表の作品群が最後の柱になります。共同研究の成果として発表されたものやギャラリーでの展示などで近年の活動の断片を我々は眼にしてきましたが、それらの背後で日々絶えることなく紡がれ続けた膨大な資料や手記そして作品は、先の二つの柱と現在を繋げ、そしてこれからの彼の活動を大いに予見させる通過点となるはずです。

当然ですが、「自己模倣」という本展に冠した言葉に、何ら悲観的な意味合いや思いはありません。それは、今展開されている彼の活動を、世間一般的な言葉へと落とし込んだに過ぎません。

「retrospective(解雇)」と一般に呼ばれる展覧会の形式も、本展の在り方の一つを指し示しているのかもしれません。ですが、本展が意図するのは、この「回顧」という常套句にありがちな現在を視座に過去を振り返る類いのものではなく、現在と過去そして未来をも全く同一地平線上に置く試みです。そうして温故知新ではなく、「故」も「新」も温め知ること。過去を創造し、未来をも振り返ること。つまりは展示室において、作家とのその作品はもちろん、観客でさえも自由に巡る(migration)ことが望まれているのです。――空を繰り返し巡る燕たちが、実は決して同じ弧を描いていないように。

経済的な成長、数字に置き換えられるような物差しを標榜しそれを豊かさや優劣の指針とするような時代は、もうとうに終わりを告げています。美術においても、作家が常に新しい作風を展開すること、センセーショナルであること、作品に市場価値を付与すること、「アートワールドのルール」を遵守すること、さらにはカウンター/サブ・カルチャーやハイカルチャーという領域――我々の感覚はこうした過剰な刺激や忌々しい不文律に慣れ親しんでしまい、ついには、何が美術なのか、それが何をなし得るのか、我々にとってどのような意味があるのか見失いつつあります。

中原浩大は――本人の述べている通り――この二十年近い年月の間にこうした「美術」の舞台から少しずつ身を引いてきました。ですがその「美術」は、かつての時代の美術に過ぎません。そうした「美術」の傍らで、彼はたえず何かを見続け、傍らに「何か」を生み出し、それらを残し続けていました。そう、ひょっとしたらそれは、あなただけに大きな意味を持つような、そんな「何か」だったのかもしれない。本展は、今までその全貌を知る機会のなかったこの希有な作家のあらゆる瞬間を(追)体験するまたとない場となると同時に、岐路を迎えつつある今日の日本において美術――もしくはそれに代わる「何か」――を体感するための、二度とない機会となるはずです。

協賛・協力等
瀬戸内国際芸術祭2013広域連携事業
協力:吉備国際大学文化財保存修復学研究科、株式会社バイストーン、スーパーファクトリー
後援:岡山県教育委員会、岡山市、玉野市、香川県、岡山県郷土文化財団
休催日
9月30日(月)、10月7日(月)、15日(火)、21日(月)、28日(月)
開催時間
9時 ~ 17時
9月27日(金)、10月25日(金) は19時まで開館
(いずれも入館は30分前まで)
観覧料
一般:800 (640) 円
高大学生、65歳以上:400 (320) 円*
小中学生:無料*
( )内は団体料金。 *年齢の証明出来るものをご提示下さい。
瀬戸内国際芸術祭2013の作品鑑賞パスポートをお持ち頂いた場合、団体料金でご覧頂けます。
展覧会ホームページ
http://www.pref.okayama.jp/seikatsu/kenbi/exh_nakahara.html

イベント情報

「対談:関口敦仁×中原浩大」
日時:10月12日(土) 14時から15時30分まで
場所:地下1階講義室
関口敦仁|せきぐちあつひと 美術家

美術の夕べ
「中原浩大をみる:担当学芸員によるギャラリートーク」
この作家の現在を知る鍵となる出品作の解説はもちろんのこと、本展開催の経緯などをお話しながら、会場をゆっくりと巡ります。
講師:髙嶋雄一郎 (当館学芸員)
日時:10月25日(金) 18時から19時まで
場所:中原浩大展会場(当館地下展示室) *要観覧券

美術館講座「中原浩大をしる:過去の展覧会や雑誌記事から」
本講座では「中原浩大」の過去を振り返ります。これまでこの作家がどのような活動を行ない、それがどのように論じられていたのかを多くの資料や画像とともに巡ります。
講師:髙嶋雄一郎 (当館学芸員)
日時:10月19日(土) 14時から15時30分まで
場所:地下1階講義室

「中原浩大をふりかえる:中原浩大×髙嶋雄一郎 (当館学芸員)」
展覧会の最終日。本展で成しえたこと/成しえなかったことなどその活動を振り返り、これらの作品の未来について担当学芸員が聴きます。
日時:11月4日(月・祝) 14時から15時30分まで
場所:地下1階講義室

公開修復「中原浩大の作品を修復する」
吉備国際大学文化財保存修復学研究科の協力により、展覧会期中に館内にて中原浩大氏の絵画作品の修復を行ない、その様子を公開します。
日時:10月19日(土)、26日(土) 終日 *適宜休憩あり
場所:美術館内 *要観覧券
担当:大原秀之 (吉備国際大学文化財保存修復学研究科教授)、上原彰子、片山栞、武田尚子、塚本貴之、藤本康秀 (同科大学院生)

ワークショップ「blue print」
中原浩大氏の作品において、非常に長い間数多く試みれらてきた青写真(太陽光を利用して)を体験します。
日時:10月13日(日) 14時から16時まで
場所:研修室
講師:中原浩大氏
定員:先着50名 *順次体験頂けます
参加費:100円
対象年齢:特になし(未就学児は保護者同伴)

この他にも、公開制作やパフォーマンス、体験型作品の特別鑑賞日などを予定しております。
詳細は、当館HPにて随時ご確認下さい。

会場情報

岡山県立美術館 オカヤマケンリツビジュツカン

THE OKAYAMA PREFECTURAL MUSEUM OF ART

会場住所
〒700-0814
岡山市北区天神町8-48
ホームページ
https://okayama-kenbi.info
更新日:2013年11月12日
登録日:2013年5月15日