近代において、フランスとりわけパリは、世界における美術の一大中心地として機能し、外国から多くの画家たちを集めてきました。明治以降は、日本からも多くの画家がこの地を訪れ、そこで学んだ技法を祖国に持ち帰り、西洋絵画の発展に寄与してきました。第二次大戦後も多くの日本人画家がパリへと渡りましたが、以前とは異なり、彼らの中には、長期もしくは終生をその地で過ごし、逆に作品を日本に送ってくるような在外作家が多く現れるようになりました。
このたびの展示では、フランスおよびイタリアに渡り作品制作をした日本の現代美術作家12名による作品20点をご紹介します。ピカソとマチスに感化されながらも独自の表現を模索した猪熊弦一郎、「魂の印象派」を自称し光にみちた独自の風景画を描いた木村忠太、戦後まもなくパリを中心に世界を席巻した「熱い抽象」アンフォルメルの手法を取り入れた今井俊満、田淵安一(以上渡仏作家)、そして、イタリアに渡り明快な色面構成の絵画を試みた阿部展也、高橋秀など。ヨーロッパに滞在し、その地の歴史や文化を吸収しながら、独自の表現を追求した日本人画家たちの挑戦の軌跡をご覧ください。