小説、漫画、映画の世界に没頭するとき、夢を見るとき、瞑想するときなど、わたし達は日常空間から開放されて、異空間を体験することができます。もちろん美術を通しても、人は異空間を体験できます。みなさんも、遠い過去の出来事や神話の場面などを描いた絵画に接するとき、絵の中の世界にトリップし、しばし日常のことを忘れたという経験がおありではないでしょうか。
私たちを異空間へといざなう点では、現代美術も近代以前の美術に負けてはいません。いや、既成概念や伝統的な約束事から解放された現代美術においては、その度合いはより高いとさえいえるかもしれません。
このたびの展示では、私たちを異空間へといざなう現代美術作品の数々(14作家25点)をご紹介します。マンダラ図のような神秘空間を超越的な視点で描き出した前田常作。卵が割れる瞬間をリアルに描き出し日常に潜む非日常を提示する上田薫。日常風景を「書き割り」のように単純化し描き出すジュリアン・オピー。階段や書棚を鉛筆で丹念に描きミステリアスな雰囲気を醸し出す小川百合など。現代作家による趣向を凝らした異空間の表現の数々をお楽しみください。