八木一夫(1918-1979)は陶芸の世界に、オブジェという新たな造形分野を切り拓いた作家の一人です。伝統ある京都の地に、陶芸家の長男として生まれた八木は、新しい陶芸を目指し、戦後まもない昭和23(1948)年、鈴木治、山田光らと走泥社(そうでいしゃ)を結成しました。昭和29(1954)年に発表した<ザムザ氏の散歩>は、「オブジェ焼」という言葉の端緒となり、用途をもたないやきものとして、現代陶芸史の記念碑的な作品となっています。戦後、国際化する美術の状況の中で、イサム・ノグチや堀内正和など同時代の美術に敏感に反応し、いち早く世界に認められた陶芸家の一人となりました。
生涯を通じて八木は、白化粧や無釉焼締、信楽や黒陶と、次々に作風を変えながら、批判精神と機知あふれる造形を生みだしました。そのオブジェ作品は、今なお新鮮な驚きを観る者に提示し続けています。また、その一方で、八木は古陶磁にも深い理解と洞察を示し、器作品や茶碗にも優れた作品を遺しました。
本展では、初期から晩年までの陶芸作品の他、ガラスやブロンズ、素描等を併せて展示し、戦後陶芸の流れを変えた陶芸家・八木一夫の軌跡を回顧します。