戦後日本の出版界でひときわ異彩をはなった家庭雑誌「暮しの手帖」。昭和23年の創刊以来今日まで、広告をいれず、徹底して庶民の質実な暮しの視線に立った誌面づくりを貫いてきました。
その「暮しの手帖」の創刊から53年まで、30年にわたって現役の編集長をつとめながら、装釘家、イラストレーター、コピーライター、デザイナー、ジャーナリストとして多彩な活躍をしたのが花森安治(明治44年~昭和53年)でした。
本展では、花森安治の表紙原画・カット作品はもちろん、世田谷の作家たちとの交友も交えて、戦後の文化、ライフスタイルに大きな影響を与えた「暮しの手帖」と、編集長・花森安治のエディトリアル・スピリッツを探ります。
今、生活や暮しをテーマとした雑誌がつぎつぎと創刊され、ファッションやデザインを含めた新たなライフスタイルが若者の間で話題となっています。それらの誌面を飾る「スローライフ」「リサイクル」「エコ」「手作り」「リメイク」、あるいは最先端の「ロハス(Lifestyles Of Health And Sustainability)=ココロとカラダと地球にやさしいライフスタイル」といった言葉には、花森安治が雑誌でくり返し主張して来たメッセージと共通するものがありそうです。
長く「暮しの手帖」を愛読した世代だけでなく、ぜひとも若い人たちにも見て、感じて、考えていただきたい展覧会です。