版画といえば、小学生の頃おぼつかない手つきで彫刻刀を持ち、木板に絵を刻んだことを思い出す方も多いと思います。
木版画の歴史は古く、奈良時代までさかのぼります。最初は仏像や経典など、墨刷り一色の極めて簡単なものから出発しました。
その後、江戸時代も半ばを過ぎると、版画は原画を複製するという当初の目的から発展し、版元・絵師・彫師・刷師などの専門家集団の共同作業のもと、それ自体が世界的な芸術作品として昇華しました。そして、東洲斎写楽・喜多川歌麿・葛飾北斎・歌川広重らによって、役者や名所が描かれ、数多くの名作が生まれました。
また木版画以外の版画は、15世紀に銅版画が、18世紀に石版画がヨーロッパで出現し、木版画とは違った世界を形作りました。日本の版画とヨーロッパの版画は、高度な印刷技術を持ち、明治維新以後互いに影響を与え更なる展開をします。そして、コラージュや、シルクスクリーンなどの新技法も加わり、芸術表現の一つとして確固たる地位を築きました。
今回の展覧会では、葛飾北斎・歌川広重らの錦絵の世界から、様々な技法を用いた現代版画までを、日本の作家の作品を中心に展示いたします。
時代や技法の違いによって様々な表情をのぞかせる版画の世界をぜひこの機会にお楽しみください。