昭和から平成にかけて、日本民藝館の創設者・柳宗悦(一八八九―一九六一)の民藝思想に共感し、それを自らの仕事に反映させた多くの工芸作家たちがいます。彼らは、健やかな暮らしから生まれた民藝品の中から美の滋養を汲み取り、それぞれに新しい表現の道を拓いていきました。そして、実用を離れた工芸の在り方にも一石を投じるなど、日本の工芸界の発展に大きな役割を果していったのです。
本展では、その中から重要無形文化財保持者(人間国宝)の指定を受けた九名の作家に焦点を絞り、合わせて約二〇〇点の代表作を展示いたします。紹介する工芸作家は、物故作家として富本憲吉(色絵磁器)、浜田庄司(民藝陶器)、芹沢銈介(型絵染)、安部栄四郎(雁皮紙)、黒田辰秋(木工芸)、金城次郎(琉球陶器)。現在も活躍する工芸作家としては島岡達三(民藝陶器・縄文象嵌)、平良敏子(芭蕉布)、宮平初子(首里の織物)の諸氏です。日本の工芸史上、これだけ多くの優れた工芸作家たちが、ひとつのグループの中から輩出しているということは、まことに驚くべき現象です。これは、「民藝」という土壌がいかに豊潤であったかという、確かな証ともいえましょう。