野口小蘋(1847-1917)は、近代を代表する女性南画家です。関西南画壇の重鎮、日根対山に学び、明治10年(1877)、甲府の酒造業野口家へ嫁ぎました。その後、上京して頻繁に開催されていた国内外の博覧会や展覧会へ出品を重ね、東京画壇を代表する南画家として活躍しました。その一方、華族女学校で教鞭を執り、多くの作品が皇族や華族に買上げられるなど、当時の上流階級との関わりの深い画家でもありました。明治37年(1904)、女性で初の帝室技芸員に任命され、翌年には、正八位 (同41年には従七位) に叙せられ、さらには、大正天皇の御大典奉祝画を献上する栄誉を授かっています。
近年、近代美術史に対する認識が変化し、その再検討、再構築が試みられています。本展では、小蘋の代表作をはじめ、近代を代表する南画家たちの作品を併せて展観します。それらを一堂に会することで、新たな小蘋の近代美術史上における位置づけが明確となり、さらに近代南画の質の高さと層の厚さを認識する機会となれば幸いです。