明治30年頃から、封建的家庭における女性の悲劇や夫婦・親子の愛憎などをテーマとしたいわゆる「家庭小説」が流行しました。幅広い読者層、特に女性の読者を対象に各新聞に連載され、熱狂的に迎えられました。
家庭小説のはしりといわれる明治期の大ベストセラー小説の尾崎紅葉「金色夜叉」と徳富蘆花「不如帰」。爆発的人気によって家庭小説人気のピークをつくった柳川春葉の空前の大ヒット作「生さぬなか」。人気挿絵画家によってつけられた挿絵には、薄幸の美しいヒロインが描かれ、数奇な運命をよりリアルに引き立てました。また、家庭小説は、すぐさま新派劇となり、新派の発展と隆盛にも大きく貢献しました。
本展では、これらの家庭小説を、挿絵・装幀本口絵・新聞切抜き・絵葉書・新派劇の絵看板・辻番付などの資料から振り返ります。さらに、「生さぬなか」の作者でもある小説家・柳川春葉の関係資料もあわせて展示します。尾崎紅葉門下の四天王の一人とされながらも、現在ではほとんど知られていない春葉を、著作本・原稿・書簡・遺愛品・写真など初公開の資料を交えながら紹介します。
読者の涙をしぼった波瀾万丈の「家庭小説」をお楽しみください。