「建築家として、もっともうれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれているのを見ることである。日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感じられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか」-吉村順三・1965
建築家・吉村順三は、建築にたずさわる喜びをこの飾りけのない言葉が示す深い心根に置き、生涯にわたって人々の日々の暮らしの場に暖かなまなざしを向け続け、日本の自然や固有な文化風土に根ざす数多くの秀作を残しました。
本店は、その暖かな人間愛と深い生活への洞察をとおして取り組んだ住宅作品をはじめ、多様な公共性を持つ建築への取り組みを一堂に集め、建築家・吉村順三の創作世界とその今日的な意味を再考しようとするものです。
吉村順三はまた東京藝術大学建築科において長く後輩の指導にあたり、建築界で活躍する多くの人材を育てました。いま建築科は創設100年の節目にあり、建築教育の歴史や今後の環境を考える記念行事のひとつの柱としても本展を位置付けています。
この展覧会をとおして、建築や建築家の活動が、広く一般の方々に理解されることを願っております。