コカ・コーラにハンバーガー、キャンベル・スープ、そしてマリリン・モンロー・・・。これら、私たち大衆にすっかりお馴染みのものたちは、いずれも60年代のアメリカを象徴するものともいえるでしょう。そして、ポップ・アートのモチーフとして大衆に浸透していったものでもありました。社会的に様々な問題を抱えながらも、大量消費の時代を迎えて豊かさを謳歌していた60年代のアメリカ。その頃、美術においては、あのアンディ・ウォーホルをはじめとしたポップ・アーチストたちが活躍し、美術界の常識を覆す作品を次々と生み出していきました。それまでの高尚な芸術作品からごくごく日常的なものを芸術にしてしまうポップ・アートへの転換は、当時、非常に革新的なものでした。
1950年代、イギリスに始まったポップ・アートは、アメリカで大きく発展し、大消費社会を背景に大衆の間に「流行」していきます。ヨーロッパのほかの国々にも伝播したポップ・アートは、60年代には世界を席巻しました。そして、現在に至るまでその影響力は絶大なものがあります。
今回の展覧会では、ポルトガルのシントラ近代美術館のベラルド・コレクションから作品をお借りしています。ベラルド氏はポルトガル屈指の実業家であり、若い頃からの夢であった美術品コレクションを一代で築き上げました。ポップ・アートのコレクションは、アメリカをはじめ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガルなど各国の作品に及んでおり、この展覧会ではこれら多岐に渡る国々の豊かな成果を見ることができます。
ポップ・アートの「ポップ」とは、もともとは大衆を意味する言葉です。その言葉通り、ポップ・アートは常に大衆のものでした。皆さんにも肩の力を抜いてこの展覧会をお楽しみいただき、ポップ・アートを通じて美術の新しい魅力に触れていただければ幸いです。