岐阜県では、ユニークな神仏像彫刻で知られる江戸時代の僧・円空を顕彰する「円空大賞」を制定しています。これは、円空という偉大な先達を通して現代社会に生きる我々自身の心を見つめ直し、21世紀という時代に芸術の必要性を訴えようとする文化振興の試みです。平成11年に創設された同賞は、円空仏の独創性や土着性、そして慈愛の精神を現代に甦らせ、芸術文化の振起を図る取り組みとして今回で3回目を数えます。
このたび、この円空精神に通じる現代アーティストを表彰する事業の一環として、昨年の授賞式に引き続き、受賞者の作品を紹介する展覧会を開催します。21世紀の円空ともいうべき受賞作家たちの代表作が一堂に会する本展は、優れた現代美術展として高い評価をいただいています。今年の円空大賞では、前回・前々回に比べて立体彫刻以外の分野で活躍する作家が多く選ばれ、多彩な展示となりました。
軽妙酒脱な味わいで独特の色彩世界を作り上げる染色家・三浦景生(円空大賞)をはじめ、九州という郷土にこだわり、真摯な研鑽を重ねて独自の表現に到達した「絵描き」・菊畑茂久馬、かつては「Enku」の表現に嫉妬を感じ、今は共感を覚えるという彫刻家・ニコラ・アルカン、ストレートな表現で鑑賞者の認識を揺さぶる造形作家、マンダラでその名を海外まで知らしめた前田常作(以上、円空賞)、そして、表現としての書を世界に示しながら、あくまでも教育としてあり続ける書家・関谷義道(知事賞)。円空の後継である7人の表現者たちそれぞれのオリジナルな世界にご期待ください。