明治38年、阪神電鉄が大阪出入橋~神戸三宮間を開通させてから沿線の住宅開発が急激に進みました。その結果、旧来の居住者と、鉄道開発による移住者が渾然とした住環境を形成し、今日みられる阪神間地域を形作ってきました。
その中にあって、地域の景観は、どのように理解されていたのでしょうか。
今回紹介する『阪神名勝図絵』は、その指標となる作品と言えます。
大正五年、大阪朝日新聞社に連載され、翌年、金尾文淵堂で出版された本作は大和田、尼崎、武庫川、今津、西宮、香櫨園、芦屋など、ほぼ阪神電鉄沿線に集中しています。作家は大阪朝日新聞社に属する赤松麟作、野田九浦、永井瓢斎、水島爾保布、幡恒春の5名によるもので、彩色木版30点からなる作品集です。
『阪神名勝図絵』は現在まで、その存在は知られながらも、全面的に紹介されたことはありません。また、当時の阪神間の景観を考えるだけでなく技術的にも高いレベルに達した木版技術を再確認する上でも貴重な作品であると言えます。
大正期、都市に暮らす人々が阪神間に如何なる理想を求めていたのか、「市外居住」の原風景とは如何なるものであったのか、本企画が懐かしき阪神間の景観を考える機会になれば幸いです。
出品作品:
阪神間地図1点
全作品目録1点
作品30点
タトウ6冊表紙カット
大阪朝日連載記事
『市外居住のすすめ』・『郊外生活』
絵ハガキ・大正期阪神間地図・阪神電鉄案内
など約60点
関連講座(要観覧券):
①平成17年7月16日(土)午後1時30分~
「阪神間名勝図絵」会場列品解説 本館学芸員:明尾圭造
②平成17年7月23日(土)午後1時30分~3時
記念講演(美術博物館講義室)
「阪神間モダニズムの光と影」本館学芸員:明尾圭造
図録:
1000円前後で1000部刷(A5版)予定。