本展は、現代美術の巨匠ホルスト・アンテスの作品と、北米・インディアンの一族である「ホピの人々」が、宇宙の万物に宿る精霊として深く信仰する「カチーナ人形」を並列的に展示する展覧会です。
1936年、ドイツのヘッペンハイムに生まれたアンテスは、画家、版画家、そして彫刻家として世界的に活躍する美術家であると同時に、アボリジニの作品や南米の先住民族の羽根かざりなどプリミティブ・アートの一大収集家としてもその名を知られます。とりわけ、約800点に及ぶカチーナ人形のコレクションは、世界最大を誇っています。
カチーナ人形は、20世紀初頭の欧米の芸術家たち、特にシュルレアリストたちに礼賛され、その高い精神性と芸術性は、今なお人々の心をひきつける魅力を放っています。アンテスもまた、これらカチーア人形たちに触発され、独自の表現世界を築き上げた芸術家の一人です。彼の描く大きな頭部とたくましい脚の人物像は「頭足人」と呼ばれ、カチーナ人形の姿かたちに魅せられたアンテスが創造した形象であり、ホピの人々の神話的世界と現代人の精神世界を結び付ける彼特有の芸術世界を現す主人公たちです。
今回の展覧会は、企画展示室1でアンテスのコレクションの中から厳選した79体のカチーナ人形を展示し、企画展示室2では、国内で所蔵されている秀逸な作品にドイツのシュプレンゲル美術館の作品を加えた62点で、初期から最新作にいたるアンテスの芸術世界を紹介します。カチーネ人形とアンテス作品、ともに日本では始めての本格的な展覧となる本展は、芸術家とその制作の着想の源、両者のスピリットに触れる貴重な機会となることでしょう。