斑鳩(いかるが)とは、7世紀に聖徳太子の建立した斑鳩宮(いかるがのみや)のあったところ(法隆寺の東院夢殿はその址と言われています。)の周辺をいい、現在の奈良県生駒郡斑鳩町にあたります。今回展示の「古寺巡礼」はこの、歴史ロマンあふれる斑鳩から奈良にかけての旅です。
土門拳の代表作「古寺巡礼」は、昭和38(1963)年美術出版社から豪華写真集第1集が出され、大きく世の注目を浴びました。(その後昭和40年に第2集、43年に第3集、46年に第4集、と続き50年に第5集で完結しています。)記念碑的な第1集は、法隆寺の迫力ある作品群で始まっています。また、続く第2集は、古代から吹く風を思わせる飛鳥の里の古墳から始まっています。強く美しい日本の原点を求めて撮り続けた「古寺巡礼」がそうしたところから始まっているのは、土門拳が、斑鳩から奈良の地に古くから連綿と連なる日本人の魂を感じていたからかもしれません。
展示するのは、飛鳥の里・法隆寺・中尊寺・聖林寺・東大寺・唐招提寺・薬師寺・円成寺・春日山石仏群などの写真です。
斑鳩から奈良にかけて何度も何度も寺々をめぐり、土門自ら胸に打たれたものだけにカメラを向けた作品を通して、日本の魅力を再発見できることでしょう。