季節感や、時節の風物を鋭敏に反映する〈雑誌〉の世界から、画家への道を歩み始めた竹久夢二にとって、「季節を的確に表現すること」は、当初から大きな課題であったと言えるでしょう。夢二は、また、その最初の著書に『夢二画集 春の巻』と名付けて以来、『夏の巻』『秋の巻』『冬の巻』と四季名を冠した画集を発表し、その後も『童話 春』『春のおくりもの』など季節に関連したタイトルの著書を出版しています。
雑誌の表紙や口絵を描くときも、日本画を制作するときも、詩文やエッセイを著し、俳句や短歌を詠むときにも、夢二にとって〈四季の移ろいを愛で愉しむ心〉は、総ての創作活動の根底にあったといって過言ではないでしょう。
本展覧会では、四季の表現と密接に結びついた日本画作品をはじめ、季節の植物を意匠化して作られたデザイン小物や、四季の詩情をうたった詩や短歌など、〈季節〉の移り変わりを感じさせる作品や資料を中心に展観し、夢二の四季への愛着と、季節感溢れる多彩な表現を検証します。