島根県立美術館では、開館6周年を記念して「ギュスターヴ・モロー展」を開催いたします。
象徴主義の先駆者として知られるフランスの画家ギュスターヴ・モロー(1826-1898)は、宝石細工のようなきらびやかな色彩で、神話や宗教的な主題を古典の枠組みから抜け出した極めて独創的なイメージによって展開していきました。ロマン主義と古典主義を受け継いだシャセリオーから受けた啓示と、イタリア滞在で得た古典絵画の滋養、また旺盛な探求心から得た異国の図様などがモローのなかで昇華され、文学的感性に裏打ちされた豊穣な幻想性と装飾性をもつ独自の世界を築き上げています。同時代の画家たちにも大きな影響を与えたのみならず、マチス、ルオー、マルケらの優れた師として、19世紀にロマン主義の画家たちが見いだした色彩の創造性を、20世紀のフォーヴィスムの画家たちへと継承していく役割も果たしました。
この展覧会では、モローが生涯をかけた作品と邸宅をそのままにフランス国家に遺贈し開館した、ギュスターヴ・モロー美術館の珠玉の作品群を一同に会し紹介します。モロー美術館改修工事のため、まとまった借用が可能となり、日本で開催される最大規模のモロー展が実現することになったのです。代表作《一角獣》、《出現》をはじめとする、初期の作品から晩年にいたるまでの、油彩48点、水彩44点、素描80点、合計172点で構成し、モロー芸術の粋を展観いたします。