やきもので詩をつづった作家 八木一夫
八木一夫は大正7(1918)年、京都に生まれ、日本の陶芸界にオブジェという新たなジャンルを切り拓いた陶芸家です。伝統的な陶磁器に敬意と理解を示しながらも、前衛的要素を盛り込んだ作品を発表し続けました。昭和23(1948)年には、鈴木治や山田光らと走泥社を結成し、この前衛陶芸グループはその後、50年にわたって前衛陶芸を育てる役割を果たしました。
八木は幅広い数々の芸術家や文化人たちと交友関係を持ったことでも知られています。陶芸家の石黒宗麿、河井次郎や富本憲吉、彫刻家の堀口正和、イサム・ノグチなど、制作にも相互の影響がありました。また、司馬遼太郎は「八木一夫雑感」の文中で「天才」と評し、その仕事を「こちらを圧倒するほどに自分だけの思想を自分だけの言葉で語りつづける作品」と印象深く語っています。
本展では、初期から晩年までの陶芸、ブロンズ、版画、素描など約300点を一堂に展示し、ポエジーでアイロニーに富んだ八木一夫の造形世界を紹介します。