網目や水玉が増殖し画面を埋めつくす絵画。突起物が表面を覆う彫刻によるインスタレーション。光が無限に反復する鏡の部屋。1960年代、ヤヨイ・クサマの名前は、それらの独創的な作品とともに国際舞台を駆けめぐりました。70年代初めに東京に拠点を移してからも、国内外での活躍はじつに目覚しいものがあります。
思い返せば、草間彌生はいつも、みずからの心中から湧き上がるヴィジョンで「絵画と彫刻」「芸術と生活」あるいは「芸術と社会」の境界を乗り越え、小宇宙から大宇宙まで、すべてがくまなくみずみずしい生気で満たされた世界を快復しようとしてきました。その芸術は、私たちを取り巻く環境が徹底的に細分化され、制度化されてしまった現代にあって、けっして分割しえぬもの――愛や、生命や、そして宇宙の側からの、私たちへの呼びかけともいえるでしょう。
本展は、壮麗な展開を見せる80年代以降の絵画・彫刻や、近年の光とオブジェによるインスタレーションに初期の代表作をまじえて、時間の流れにとらわれない空間を作りだします。時には劇的な変容を見せながらも、つねに変わらない草間彌生のメッセージ。草間ワールドの「永遠の現在」をお愉しみください。