肉筆、合羽摺、型染。美しく、あたたかい「芹沢本」の世界。
染色家として知られる芹沢銈介。その幅広い仕事の中でも根強い愛好家がいるものに「絵本」の仕事があります。「休暇の課題に絵日記を作った小学生のころから数多くの絵本を作って」いたという芹沢。染色家としての34歳の年にデビューした後も、『絵本どんきほうて』『極楽から来た挿絵集』『妙好人因幡の源左』など、生涯に50冊にも及び絵本を制作しました。和紙に合羽摺、型染、肉筆といった様々な手法を用い、素材や造本などにもひとつひとつこだわりと愛情をつめこんだこれらの絵本は、その芸術性の高さから愛好家の間では「芹沢本」と呼ばれ親しまれました。
また同じ書物関連の仕事に「挿絵」の仕事があります。戦後すぐに手がけた童話の挿絵の仕事は、若い頃に子ども向けの絵本を作っていた経験と繋がるものがあります。また1960年に新聞連載小説「極楽から来た」の挿絵を型染で手がけ、大成功をおさめたのをきっかけに、それ以降も新聞連載小説だけでなく数々の文学小説の挿絵を手がけるようになります。型染作家でありデザイナーでもある芹沢が手がけた挿絵は、画家の挿絵とは異なる魅力にあふれ、挿絵を楽しみにコレクションする人も多かったといいます。
この展覧会では芹沢の絵本20冊と、小説や物語などの挿絵50点を中心に展示し、絵本や挿絵の世界に残した芹沢の大きな足跡をごらんいただきます。