田淵行男(1905-1989)は日本における山岳写真のパイオニアの一人であると同時に、高山蝶の生態研究などでも体系的な仕事を残し、いち早く環境破壊に警鐘を鳴らした“ナチュラリスト”の先駆者として知られています。科学者の視点と詩人の魂を併せ持ったその独自の作品は、多くの人々を魅了してきました。
白簱史朗(1933-2019)は、ヒマラヤをはじめとする世界の名峰や、自らが選んだ「百一名山」に代表される日本の山々を被写体に、ダイナミックな山岳写真の名作を多数生み出しました。また父が旧・八幡町(現・酒田市)出身だったことから鳥海山を「父の山」と呼び、撮影を重ねました。
本展では、田淵の広範な仕事を概観できる作品約40点、白簱が四季折々の鳥海山で撮影した作品約30点を展示します。異なる個性と時代背景を持つ2人の作品を展覧することで、山岳写真を取り巻く多様な視点を紹介します。