四季の変化に富む日本。われわれの先祖たちは、身のまわりの自然すべてに畏敬の念をもって接してきました。たとえば春の桜、夏の稲妻、秋の紅葉、冬の降雪、これらすべてのことがらに、人智のおよばぬ存在を感じ、それを「カミ」と呼んできたのです。その思いは今のわれわれもかわるところがありません。人生の節々、四季の折々に神社へおまいりするのはそのあらわれといえるでしょう。そして、人々のこのような思いは、数多くの美術品を生み出す大きな力ともなってきました。しかしながら、神への捧げものとして、あるいは神そのものの姿をあらわすものとして作り出されたという性格から、これらは残念なことになかなか人目に触れることもなく、これまでその魅力はあまり知られてきませんでした。
今回の特別展覧会は、京都府下の神社に秘蔵される宝物を中心に、若干の関連作品を加え、京都の神道美術について概観するものです。京都の地は、平安遷都以降はもちろんのこと、それ以前にまでさかのぼる悠久の歴史があり、それとともに歩んできた、由緒ある数多くの古社にめぐまれています。その京都で、京都府下の神社の宝物が一堂に集う展覧会が開催されるのはおそらくはじめてのことで、大変意義深いこととといえるでしょう。
本展は「一、神々の姿」「二、神々の歴史」「三、京のお祭り」「四、神々への捧げもの」「五、願いをこめて」の五章から構成されます。
本展が知られざる神々の美術、その魅力の一端に触れていただく機会となるとともに、これらが京都にかかわったすべての人々の信仰や願い、はては畏れまでをも如実に反映する、いわば京都文化そのものであるということがご理解いただけましたら幸いです。