1995年から毎年開催してきた教育普及事業「体感する美術」。10回目である今回は、美術館ができてからの10年間を振り返る意味でも、「美術館のあるこのまち」にスポットをあてたいと思います。
郊外や広々とした公園の中にある美術館と違い、佐倉市立美術館は商店街の通りに面しています。一件不利な立地条件のようにも思えますが、「美術や美術館とまちや人とのかかわりを考える」という「体感する美術」全体のテーマ、そして「現代美術は日常の中に新しい視点をもたらす」というひとつの答えは、こうした場所でアーティストによるワークショップを繰り返す中から生まれてきたものです。
かつて佐倉の中心として栄えたこのまちは、人々が住み続けながら変化を遂げてきました。現在では時代の波にさらされ、さまざまな問題を抱えてもいますが、ここに住んでいた人々の記憶の断片がまちの中に見え隠れし、「歴史」として知られるような時代から人々の営みが現在までつながっているということを実感できるところが、このまちの魅力なのではないでしょうか。実際ここでワークショップをおこなったアーティストたちの多くが、自分の問題意識と重なるテーマをこのまちにみつけ、そのたびに「体感する美術」は新しい視点からまちをみつめてきました。
まちから美術館へ、美術館からまちへ。
商店を中心にしたこのまちの方々、この「場所の力」に興味を持っている方々、そして「美術館とまち」に興味を持っている方々といっしょにプログラムを展開して行きます。