岡本太郎の作品には、初期から晩年までを通して、多くの人間や生き物が登場します。
1960年代後半からは特に、作品の中に「顔」のモティーフが増えていきました。
岡本は「わが世界美術史」(1970)連載執筆のために東西の様々な地を訪れ、現地の人々の生活や文化を取材しました。
後年の著書『美の世界旅行』(1982)では、「世界のあらゆる層に何と様々な顔があり、また眼があるのだろう。(…)一つの顔の宇宙の中に、また無限の顔、そして目玉が光っている。言いようのない実在感をもって」と語っています。
彼にとって世界の様相は、無限な「顔」がひしめき合い、成されたものと言えるでしょう。
さらに岡本は、それを実証するかのように、身の回りの物、椅子やグラス、スピーカーにも眼、鼻、口を表し、あらゆる物に「生命」を与えました。
本展では「世界」を様々な表情に溢れたものとして捉えた岡本太郎が描いた沢山の顔たちを紹介します。