建築家・原広司は、東京大学で28年に渡り教鞭をとりながら、個人住宅から美術館、そして代表作となるJR京都駅、大阪の新梅田シティ・スカイビル、札幌ドームなど世界的に著名なランドマークまでを手掛けてきた。また原による数学、哲学、芸術をはじめとした多様な視点からの建築に関する思索は、日本の現代建築の発展を大きく牽引した。その代表である1967年の著書『建築に何が可能か』における「有孔体」と「浮遊」の思想に始まる原の思想は、後に反射性住居、多層構造、機能から様相へ、集落の教え、離散的空間等、多彩な建築概念に発展し、現代建築に計り知れない影響を与えた。
本展覧会では、近年、原広司+アトリエ・ファイ建築研究所から寄贈が進められている建築資料群の中から、「有孔体」と「浮遊」というテーマの展開を示す図面とスケッチを、年代を追いながら展示する。原広司作品の根源であるこの二つの発想が、いかに具現化し、建築となっていったかという点に着目し、「思想」「構想」「実想」と三つの「想」を行き来しながら、原広司の思想と実体的建築の解読へと誘う。