豊後国岡藩(現大分県竹田市)に生まれた田能村竹田(たのむら ちくでん・1777~1835)は、その真摯な作画姿勢によって、緊密で、しかも気韻の高い作品を生み出した、江戸時代後期を代表する南画の巨匠です。竹田はまた画論『山中人饒舌(さんちゅうじんじょうぜつ)』に披瀝した高度な芸術思想と、数多くの書簡から読み取れる情に満ちた豊かな人間性によって、高橋草坪、帆足杏雨、田能村直入など優れた弟子を育て、近代に至るまで、大分地方の幅広い分野の作家たちに慕われ続けています。
なかでも、大分県の近代的自由画教育で指導的役割をはたし、福田平八郎ら多くの教え子を育てた、日本画家首藤雨郊(しゅとう うこう・1883~1943)は、竹田の芸術を深く愛したことで知られています。竹田の詩文を愛唱し、その脱俗的境涯に憧れた雨郊は、竹田の清らかな画世界に共感し、影響を受けた作品を数多く遺しています。
本展では、竹田の作品と共に、江戸時代から近代の首藤雨郊にいたるまで、竹田を慕い、その芸術に憧れた画人たちの作品を特集します。