1955年の入会から72年に解散するまで具体美術協会のメンバーだった村上三郎は、その在籍中からギャラリーでのいわゆる「個展」をほとんど開いていません。具体解散後の73年から77年にかけて、ほぼ年に一度のペースで集中的に個展を開いた時期がありましたが、まるで展覧会自体が一つの作品であるような極めてコンセプチュアルなそれらは、幾つもの個別の作品が並んだいわゆる個展とは随分と趣の違ったものでした。
今回の個展の主役は、美術館などでの大作中心の展覧会にはなかなか出品されないような、自宅にあった小さな作品、少し変わった作品や三郎と牧子が大切に残していた作品などです。二人が普段、部屋に飾って当たり前に眺めていた作品もあれば、何度かの引っ越しを経て、大事に仕舞い込まれていた作品もあります。そんな、家族にとって大切な作品やお気に入りの作品を、気ままに選んで並べてみました。村上三郎なら決して開かなかっただろう「個展」です。どうぞご覧下さい。
村上知彦
私と村上三郎さんの出会いは1992年1月に遡ります。
今に至るまでに、ギャラリーで個展をされる作家に画帖に作品を残していただくことを始めたのが1992年からでした。これを「メモリアルブック」と呼んでいます。
記念すべき1冊目の中に、村上三郎さんも足跡を残されています。
今回、村上さんのご家族のご協力を得て、ご自宅で保管されていた未発表の作品をご覧いただく展覧会を開催できることを嬉しく思います。
島田誠