平安時代に紫式部が執筆した源氏物語は、江戸時代になると印刷技術の普及などにより、大衆に浸透します。人びとに広く受け入れられたことで、本文だけでなく、挿絵や注を付けたものから手軽く内容がわかるあらすじ本まで、源氏物語にかかわるさまざまな書物が出版されました。そして、江戸文化のなかで独自の発展を遂げ、例えば源氏物語を翻案した柳亭種彦(りゅうていたねひこ)著・歌川国貞(初代、のちの三代豊国)画の『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』が人気を博しました。この他にも、物語で描かれた四季折々の美しい情景を、ハレの場や身の回りの品に取り入れました。
本展では、江戸文化のなかで多様な広がりを見せる源氏物語について、東京都江戸東京博物館のコレクションを中心にその一端をご紹介します。