南アルプス市立美術館では、名取春仙が描いた関東大震災の記録絵画を2019年に購入しました。
この作品は1巻7mにも及ぶ巻物で、大正12年9月1日に発生した関東大震災を2巻にわたり震災のなかでも被害の大きかった本所陸軍被服本廠跡地及び新吉原の様子が描かれています。当時春仙は37歳。その4年前に東京朝日新聞社を辞めていますが、文芸小説の挿絵で一世を風靡した朝日時代には社会面のスケッチ画や明治天皇の御大葬も担当し、記録絵画を描いていました。しかし、このような対策を描いていることはわかっていませんでした。
本作品は、被服本廠跡地でおこった火災旋風など被災地の様子が詳細に描かれており、震災の記録を後世に伝える大変貴重な作品となります。
今展では、この関東大震災絵巻を特別展示するとともに、2階展示室では、春仙によって描かれた鎌倉武士にまつわる浮世絵版画や肉筆画などを展示します。