畠山耕治(1956-)は鋳物(いもの)の歴史を持つ富山県高岡市を拠点に、青銅を素材とした鋳金(ちゅうきん)による制作を追求してきました。鋳金とは溶解した金属を型に流し込んで成形する技法で、鋳金で出来上がったものを鋳物といいます。
畠山の作品は抑制の効いた造形と即興的で臨場感のある表情に特徴があります。箱状の形態をはじめ、直線とわずかな曲線で構成されるその制作には畠山の造形感覚が表れ、シンプルな形状であるからこそ、「青銅の存在そのものを鋳込む」という作家の意志が示されます。そして、様々な薬品や熱などで金属に化学変化を起こす着色の工程によって、色彩と質感を創出し、青銅の造形に命を吹き込むのです。
畠山は素材や技法の特性と創意を一体に青銅の素材感を作品に現わしますが、着色技術の習熟にともない色彩の幅が広がると、その表情は多彩になっていきます。これは青銅という素材に対する理解の深まりによるもので、独自の鋳金制作を模索し、打ち立てようとする作家の姿が窺えます。
本展では、鋳金の可能性とともに独自性、自立性の確立を求める畠山の制作を初期から新作まで60余点でご紹介します。