「東海道五拾三次之内」(保永堂版)の成功を受けた版元・竹内孫八は、東海道と並ぶ基幹街道である中山道をテーマとした「木曽海道六拾九次之内」を企画しました。「保永堂版」に続き、企画当初は広重が作画を担当する予定でしたが、シリーズ1図目である起点・日本橋を手掛けたのは広重より6歳年上の絵師・渓斎英泉。二人の絵師の手になる本揃物は、全70図(ただし「中津川」は絵柄の異なる2種類が確認されているので、全体では71図が存在する)のうち英泉が24図を、広重が46図を担当しました。天保6年(1835)頃から刊行が始まり、絵師や版元の交代などの紆余曲折を経て、天保9年(1838)頃に完結したと考えられています。
風光明媚な東海道とは異なり山がちな中山道を、英泉や広重はさまざまな季節、天候、時間の中で情感豊かに描き出しました。本展では、当館の誇る「田中コレクション」をはじめ、美しき中山道を描いた作品をご紹介します。