粋で新しいもの好きな江戸っ子たち。庶民を中心に流通した浮世絵にも、彼らの関心を引き付ける斬新なアイデアが求められました。名所のように繰り返し描かれた画題であっても、アングルを変えたり、人物画と組み合わせたり、一つの画面に複数図をレイアウトしたりと、表現形式や画面構成に趣向を凝らすことで、オリジナリティのある目新しい作品へと昇華させたのです。
また、浮世絵のシリーズ物は、完結後、画帖形式にまとめられて販売されることもありました。画帖に収める画題目録を手掛けたのは、梅素亭玄魚といった意匠家たち。各画題の文字表記を中心とした図案は、作品情報を伝えるだけでなく、人々の目を大いに楽しました。
こうした、庶民の購買意欲をかき立てる作品は、絵師たちの細部にわたる創意工夫の賜物であるといえるでしょう。思わず手に取りたくなるような、デザイン性豊かな浮世絵の世界をお楽しみください。