シュルレアリスムを代表する画家として知られるサルバドール・ダリ(1904-1989)。自らを天才と称したダリは、破天荒な言動で話題を呼び、様々なパフォーマンスを芸術の名において実践しました。ダリの才能は油絵のみならず、版画、彫刻、オブジェ、舞台芸術、宝石デザイン、広告、映画、文筆と幅広い分野に及び、その大胆で奇抜な創造性は見るものを圧倒しました。中でも、50代後半から本格的に取り組んだ版画に対する彼の愛好と造詣は深く、生涯に1600点以上の作品を残しています。「やわらかい時計」「変形した肉体」など、ダリ特有のイメージが継承される一方で、エッチングの柔らかな線描からは、ダリの繊細な感性を垣間見ることができます。
本展では、1960年代から70年代に精力的に制作した版画を中心に、晩年までの作品約200点を展示します。圧倒的な素描力と洞察力をもって生み出された作品群を通して、20世紀最大の奇才といわれるダリの真髄をご堪能ください。