生涯で小説・詩・脚本・随筆など、多岐にわたる作品を7,000篇以上も残した武者小路実篤。その膨大な作品について、実篤は「僕の書いたものの内で、何が一番自分では好きかと聞かれる時がある。その時一番始めに自分の頭に浮かぶのは人間万歳である」と言葉を残しました。
「人間萬歳(狂言)」(発表時のタイトルママ)は、脚本形式の作品として、大正11(1922)年に雑誌『中央公論』に掲載されました。
この物語は、神と天使たちが地球に誕生した人間を眺める様子を描いた、一風変わった作品です。登場するのも神や天使たちで、人間は描かれません。
実篤は自身が立ち上げた共同体「新しき村」で、この作品を書き上げました。
形式は実篤が得意とする脚本(対話)形式であり、大正15年の文芸座による公演を皮切りに、令和になってからも現代的な解釈で上演されています。
本展覧会では今年発表から100年を迎える「人間万歳」を題材に、作品の生まれた背景や、演劇分野への広がり、登場人物など、作品を多くの切り口から深く掘り下げることで実篤の文学世界を読み解くことを目的とします。
また、実篤独自の喜劇作品群として書かれた「狂言」についても紹介します。