幕末の安政5年。日本は日米修好通商条約をはじめとした安政五カ国条約により、函館・新潟・横浜・神戸・長崎の5港を開港場と定め、これを皮切りに本格的な外国貿易を開始しました。当時、外貨獲得のための花形商品として輸出を支えていたのが「生糸」と「お茶」です。輸出品には商標ラベルが付けられており、お茶の荷箱にも「蘭字」と呼ばれるラベルが貼られていました。蘭字は、お茶の種類や等級、生産地といった製品情報をアルファベットや絵とともにデザインした版画です。輸出先の好みに合わせ、日本趣味の流行や消費地の趣向を反映したものなど様々な図様が考案・採用された、いわばパッケージデザインの先駆けともいえるものです。
本展では、創意工夫を凝らした蘭字を展示いたします。また、開港当初の茶の輸出拠点であった横浜港の様子を描いた「横浜絵」も合わせて紹介いたします。我が国の近代化に大きく寄与した産業にまつわる作品をご覧いただければ幸いです。