美術の中には、実に多くの動物の姿を見ることができます。龍や鳳凰、魚や鹿、鳥は何のために、どのようにあらわされたのでしょうか?これらの動物には、祥瑞(しょうずい)(良いこと、めでたいことのしるし)とされた想像上の霊獣もいれば、長生きや子孫繁栄、富貴栄華など良い意味を付けてあらわされた動物、実在する身近な動物もいます。角や牙、鱗(うろこ)や翼を持ち、水中を自在に泳ぎ、空を舞う―人とは異なる姿や能力を持つ動物に対して抱く畏敬(いけい)や憧憬の念は、これらの動物や創造された生きものへの信仰を生み出し、また身近な愛らしい動物は慈(いつく)しみ、愛翫(あいがん)する対象ともなりました。東アジアの美術にあらわされた瑞獣や動物の表現には、人と動物の様々な関係をうかがうことができます。
この展覧会では、古代から近世にかけて、中国や朝鮮半島、日本など東アジアの陶磁器や漆器を中心に、美術の中にあらわされた動物の表現と、そこに込められた意味について見ていきます。(担当 瀧朝子)