このたび、小平市制施行60周年と、彫刻家・平櫛田中(1872~1979)の生誕150年を記念して特別展『生誕150年 平櫛田中展』を開催いたします。
平櫛田中は1872(明治5)年に現在の岡山県井原市に田中家の長男として生まれ(一説によると片山家)、1882年(明治15)に広島県沼隈郡今津村(現在の福山市)の平櫛家の養子となりました。
青年期に働きに出た大阪で美術に目覚め、人形師の中谷省古に入門して彫刻を学び、さらに上京して高村光雲の門下生となりました。
それ以後は美術界の指導者・岡倉天心、臨済宗の高僧・西山禾山との交流を通じて自己の彫刻の表現を模索し、仏教説話と中国の故事などを題材としながら深い精神性を感じさせる作品を制作しました。
大正期は、モデルを使った塑造の研究に励み、その成果を《転生》《烏有先生》などにおいて示し、昭和初期以降は、邪道と見なされていた彩色の使用を試みながら「伝統」と「近代」の間に表現の可能性を求め、現在東京・国立劇場のホールに飾られる絢爛豪華な《鏡獅子》において結実しました。1962年(昭和37)には、彫刻界でのこうした功績によって文化勲章を受章しました。
本展では、全国各地から集めた、明治、大正、昭和の各時代の代表的な作品を取り上げ、近年の美術史研究の成果を踏まえながら、この不世出の彫刻家の全貌を紹介します。