この度、アートコートギャラリーでは、2018年に続いて2度目となる川田知志の個展を開催します。
川田は、都市における空間と人、そして美術表現の関わりを、壁画を軸とする表現によって問い直しながら制作・発表を続けています。その手法は、漆喰と顔料で描く伝統的なフレスコ画の技法に現代の造形素材を融合させるとともに、特定の壁・空間からの自立や、それによって生まれる時間の流れを取り込むことで、新たな表現の可能性を探るものです。
本展では、作家自身の生きる時代を特徴づける「郊外の景色」をモチーフにしたフレスコ画から、壁画の移設技法を応用してその描画層のみを引き剥がし、カンヴァスの上に移し替えた新作群を発表します。200号大の作品を中心に、展示空間と作品、身体の関係を見極める川田ならではの構成となります。
都市近郊のどこにでもある“匿名”の風景と、固有の壁面と繋がりを持たないイメージの皮膜。両者が結びつくことで生まれる作品は、壁画とタブローの狭間で揺らぎながら「今ここ」との微妙な距離感をまとう存在として鑑賞者に差し出されます。ここではないどこか、今ではないいつか、これではない何か---「彼方」と交信を続ける川田の表現を通じて、私たちがその先に想像するのは果たしてどのような景色なのでしょうか。