民俗学者・宮本常一(1907-1981、1965-1977 本学教授)は、機械以前の道具=民具を人間の動作を助けるものと考え、その造形が身体の構造や人、地域それぞれの文化に影響されていることに着目しました。本展のテーマ「運ぶ」は人にとって基本的な動作の一つです。その方法や用いる道具も、荷物の違いはもちろん性別・地形・気候・移動距離など様々な条件に合わせて選択されます。とりわけ、機械以前の時代においては人力に頼ることが多く、運搬方法の選択や道具づくりには知恵が求められました。一見素朴な道具も、素材や身体に合わせた細部の加工からは、現在と異なる自然との向き合い方、美意識も読み取ることができます。本展では、荷物を支える頭・肩・背・腰・手という身体の部位ごとに運搬道具を紹介し、日頃人々が意識することのない道具の造形と動作との関係を見つめ直します。