鈴木華邨(1860~1919)は、明治から大正にかけて活躍した日本画家です。絵をはじめは狩野派中島亨斎に学び、のちに亨斎の世話で菊池容斎に師事しました。その後、様々な画派に私淑し研鑽に励んだこともあり、狩野派・文人画・円山四条派などだけででなく、西洋画の影響も受けた画も残しています。華邨は花鳥画を得意にしており、洒脱味があり、巧緻な写実性、四季感を生かした瀟洒な画風に特徴があります。明治33年(1900)のパリ万国博覧会に出品し銅牌を受賞するなど、ヨーロッパでも高く評価された画家の一人でした。しかし、現在では残念ながら当時の活躍の面影は無く、忘れ去られた画家となってしまいました。
小林一三が鈴木華邨と出会ったのは明治35年頃のことです。明治39年には「鼎会」という華邨・寺崎広業・川合玉堂を後援する会を発足します。一三は三井銀行に勤めていた頃であり、若き日の一三が最も力を入れて収集したのが華邨の作品でした。一三はこの後東京から大阪に転居する際にそれまで集めていた作品を一度処分していますが、華邨の作品だけは処分せず大阪に持ってきました。
このたびの展覧会は、明治画壇の大家の一人でもある鈴木華邨の作品を初公開の作品も併せて一堂に公開し、改めてその画業を振り返り、日本画家・鈴木華邨の姿を浮かびあがらせます。四季のうつろいを見つめて、鮮やかに描き出した華邨の花鳥風月の世界をお楽しみください。