■名古屋画廊第8回遊馬賢一展に寄せて 笠井誠一
名古屋画廊で初めての個展の折に一文を寄せたのは30年前になります。人物や身辺の風物を主題にそれらが呼び起す印象を画面に転換する試みは今も変りませんが、一つひとつの物への観察とそれ等の配置の工夫を通して確かな存在感を求めるやり方は着実に成果をあげて来ています。色彩についても平面的な画面と西洋流の油絵具の扱いによって独特の平明な絵肌が見られます。近年のブルゴーニュやペルージュ等を取材した風景では、異国の自然から新たな感興を受け入れながら、程よく統制され遊馬君らしい作品に仕上げられている、同時に油彩画の正攻法に支えられた揺るぎない表現が認められます。3年前に伴侶を失った痛手は量り知れませんが、作家活動に支障を招く事なく歩みを続けています。また立軌展の会務や後進の世話等にも力を傾ける一方、旺盛な発表活動は周囲の注目する所です。そうした作画以外の様々な経験の蓄積が彼の創作に大きく作用している筈です。古希を迎えた遊馬君の今回の展覧会を機に、彼の作品に更に画格が加わって行くことを期待しています。 (立軌会同人・愛知県立芸術大学名誉教授)