本当に美しいとは何か。
今から約80年前の1941(昭和16)年、民藝運動の主唱者である柳宗悦(そうえつ)は、アイヌの手仕事の美しさに着目し、日本民藝館で「アイヌ工藝文化展」を開催しました。作品選定と陳列を任されたのは、柳を師と仰いだ染色家の芹沢銈介(けいすけ)で、染織、木工芸など600点を紹介。これが芸術的観点からアイヌの造形美を取り上げた最初の展覧会となりました。さらに柳は、雑誌『工藝』(106号、107号)でアイヌ文化を特集し、「美しいのみならず、立派でさえあり、神秘でさえあり、その創造の力の容易ならぬものを感じる」とその造形世界を高く評価したのです。
「アイヌ工藝文化展」に展示されたアイヌコレクション(杉山寿栄男蒐集)の多くは、残念ながら戦災で焼失しましたが、アイヌの美に魅せられた柳宗悦と芹沢銈介は、その後、多くの衣装や工芸品を集め、それらは現在、日本民藝館、静岡市立芹沢銈介美術館などに受け継がれています。
この展覧会では、柳宗悦と芹沢銈介の眼によって蒐集されたコレクションを中心に展示し、壮麗で力強い造形美を紹介します。