東山魁夷の青、奥田元宋の赤―。特定の色が画家の名と結び付けられ、代名詞のように語られることがあります。絵画の中の色は、作品のイメージや画家本人の世界観を伝えるうえで、重要な役割を担っています。このたび山種美術館では、近代・現代の日本画から、印象的に色が表された作品を取り上げ、画家と色の密接な関わりをひもとく展覧会を開催いたします。
元来、日本美術の伝統的な絵具には、鉱石や貝殻をはじめとする天然素材が主に用いられてきました。近代に入ると、新たに開発・輸入された合成絵具や西洋の色彩学が日本画家に大きな影響を与え、制作の幅を広げることにつながりました。その一方で天然岩絵具を中心とした伝統的な表現も重視され続けており、画家たちはそれぞれに、日本画ならではの色の可能性を追及しながら現在も多彩な作品を生み出しています。
本展では、《年暮る》で雪降る京都を青色で静謐に表した魁夷、《奥入瀬(秋)》で紅葉した奥入瀬渓流を赤色で鮮麗に描いた元宋をはじめ、竹内栖鳳、奥村土牛など色を効果的に取り入れた日本画家の作品を約50点展示します。画家が自らの芸術を創造するため、どのような色を制作に活かしたのか、それぞれの言葉や、社会的背景などを踏まえながら、色を通じて見えてくる画家たちの軌跡をご紹介いたします。