2019年は、戦後日本の陶芸界を牽引した作家のひとりである、藤本能道(よしみち)(1919-1992)の生誕100年にあたる年です。藤本は東京美術学校(現・東京藝術大学)にて工芸図案を学んだ後、色絵磁器の大家である富本憲吉(1886-1963)らに師事し、作陶の道に進みました。青年期には前衛的な作陶家の団体、走泥社に参加するなど方向性を模索しますが、やがて師の仕事を継ぐように色絵磁器の技を追求し、白磁の上に瑞々しい色彩で、草花や鳥など、生命のあるものの美を描き続けました。藤本は既存の色絵技法をさらに展開し、色絵具の改良や、絵具と釉薬を融合した新たな表現に取り組み、1986年には重要無形文化財「色絵磁器」保持者として認定されています。
当館創立者の菊池智(1923-2016)は陶芸を愛し、作家との交流を楽しみましたが、中でも最も集中して蒐集したのが藤本の作品でした。コレクションには藤本の代表作と言える貴重な作品が多数含まれています。本展では、菊池コレクションを中心に、藤本ゆかりの青梅市の市立美術館所蔵の作品や未発表の素描資料等を加え、改めて藤本能道の活動を検証し、その充実した創作の軌跡をご覧いただきます。