人間はむかしから、「生」と背中あわせにある「死」と向かい合ってきました。そして、のがれることのできない不安や恐怖を心に抱きながら、これらの気持ちを、妖怪や幽霊、地獄のような異界の情景に造形化してきました。
日本では、千年以上も前、仏教が伝来した時から死後の世界観がさまざまに論じられてきました。脈々と語り継がれ、そして描き継がれてきた地獄絵は実に個性豊かです。一方、幽霊もまた仏教の説話により誕生したといわれます。芝居などにも度々登場し、この世に想いを残した亡者が描かれた幽霊画は、多彩な姿で現代に伝わっています。
これらは、目には見えない力や祈りや想いを、伝え、守り、感じるものであるといえるでしょう。この展覧会では、幽霊や地獄の表現が、どのように受け入れられ、戒めや教えとして受け継がれてきたかを紹介します。