「妙好人」(みょうこうにん)とは、浄土真宗において、特に信仰に厚い念仏の修業者をさします。その多くは経済的にも教養的にも恵まれない、被支配階層の庶民であるのが特徴です。幕末より、その列伝が「妙好人伝」として編纂されてきました。木版画シリーズ「妙好人伝」は、堀尾貞治(ほりお・さだはる/1939年神戸生まれ)と周治央城(しゅうじ・ひさき/1930年高知県幡多郡生まれ)の 合作により、1992年以来現在まで総数100点が完成しています。それらは堀尾による下絵を周治がベニヤ板に彫り、共に足踏みで摺る、という方法で制作されます。1986年、二人は会社の同僚として出会いました。それまでほとんど美術と無縁であった周治は、元「具体美術協会」会員であった堀尾の影響で、我流で版 を彫ることにのめり込んでゆきます。ベニヤ板一枚サイズの大型木版画は、技術的問題などの枝葉末節を超越した迫力で、我々に迫ってきます。平凡の極みが 時にある本質に迫りうるという、まさに「妙好人」的な在り方。それは芸術に対する我々の既成概念への再検討を促します。
なお、本展は、同時開催の特別展「二楽荘と大谷探検隊II」の関連企画として構想されました。いずれも浄土真宗と関連していますが、むしろ芸術、芸術家 の在り方という、普遍的な問題として考察しようとするものです。