品川工(たくみ)(1908~2009)は、新潟県柏崎市に生まれ、練馬区に居住した作家です。
1928年東京府立工芸学校(現・都立工芸高校)を卒業後、彫金家・宇野先珉(せんみん)に師事。その後、兄・品川力(つとむ)とともに東京帝国大学近くで開店した喫茶食堂ペリカン(のちのペリカン書房)にて、立原道造や織田作之助、串田孫一らと出会います。また店に出入りしていた帝大生に訳してもらったモホイ=ナジの著書“Von Material zu Architektur(材料から建築へ)”に感銘を受け、紙彫刻やオブジェなどの制作を始めました。1935年から恩地孝四郎に師事し、本格的な版画制作に入ります。木版画を学ぶ一方、印刷会社に勤めた経験から“光の版画”やフォトグラム、鏡を使った“プリントミラー”など様々な版画表現を試みました。また実験的な版画制作と並行してユーモラスなオブジェやモビールも続けて制作し、著書も残しています。
品川は様々なジャンルからのアプローチが可能な作家であり、本人も「版画家」ではなく「造形作家」と呼ばれることを好んだといいます。没後10年の節目に開催する本展では、品川が生みだした様々な造形を、素材やフォルムの組み合わせに注目することでその表現の軌跡を辿ります。親しみやすい造形ながら鋭い実験精神に裏打ちされた品川の作品約70点をご覧ください。