本展は、日本画家・松尾敏男(1926~2016)の画業を、「新しい日本画を志して」「内省的な絵画から写生重視の絵画へ」「現代における日本画の可能性を信じて」「画業の終着点へ」の4つの章に分け紹介しています。
再興第53回院展に出品し日本美術院賞・大観賞を受賞した《鳥碑》(1968)や、大きな力に翻弄される野牛を描いた当館所蔵の《洪水》(1972)などは、松尾自身が実感していた生命の循環をテーマに制作されました。自身の「生きること」を絵画に表現したことは、その後の松尾にとって大事な初期作品となりました。
また、松尾は「『花の中に命を感じますね』と言われるような絵ができなければいけない」と語り、写生を重視して、牡丹を描きました。《耀春》(1980)から登場し、素描も含め、実質上の絶筆となった《玄皎想》(2015)まで、松尾の代名詞ともいわれる牡丹をご覧ください。
本展は、2018年1月に松尾の出身地、長崎県美術館を皮切りにこれまで全国7か所を巡回、当館が最後の会場となりました。松尾が生前、自らリストアップしていた作品を中心に構成された没後初の大回顧展です。