フランス語でコミックは「バンド・デシネ」略して「B.D.(ベデ)」と呼ばれます。B.D.とはデッサンの帯のことで、1コマの風刺画ではない、コマが連続した読み物のコミックをさします。B.D.と日本のマンガの大きな違いは、ストーリー重視の日本のマンガに比べ、B.D.は絵を重視することに大きく表れます。B.D.では原作者と画家が別であることが通例であり、絵はすべてが彩色され、ひとつひとつのコマが完成したイラストといえるほど、細密に描きこまれています。また大人向けの作品が多いこともBDの特徴です。作家はひとつの作品に長い時間をかけてとりくみ、「アルバム」と呼ばれる、イラスト集のようなフルカラー・ハードカバーの大型本としてコミックは出版されます。大人向けの絵本として楽しめるクオリティの高いグラフィックこそがB.D.の特徴であり、日本にはないコミック文化の形であるといえるでしょう。本展では、メビウス、エンキ・ビラルなどの日本の漫画家にも大きな影響を与えた大御所作家のみならず、従来のB.D.とはことなる表現を模索する新進気鋭の作家たち総勢15人を原画と資料で紹介、また出版文化としてのBDの歴史を示す出版資料、映像などを展示し、フランスコミックすなわちB.D.の世界の広がりを紹介します。