東洋美術において、樹木のモチーフは古くから重要な役割を担ってきました。中国で発展した山水画、樹石画、そして故事人物画などで、樹木は画面に奥行きや臨場感を生み出すだけでなく、季節を伝え、詩情を喚起させるなど、様々な効果を持ちました。
また樹木は、季節や樹齢によって姿を変えていきます。緑葉、紅葉、落葉した木、若木や老木などは、しばしば人間の姿や生き様に重ねて描かれました。更に年中葉を茂らせる松などは、信念を曲げない高潔な人格のシンボルとして古くから文人達に愛され、人気の画題となりました。
こうした樹木の表現方法やイメージは、国境を越えて東アジアで共有され、各々の国の気候、文化のもとに発展を遂げていきます。本展観を通じて、中国、朝鮮半島、日本における多彩な樹木表現の美をお楽しみいただければ幸いです。
(担当 都甲さやか)